電子書籍が注目を浴びていますが,2010年7月1日に電子書籍配信事業準備会社というのが設立されました.この会社は電子書籍配信事業がどうあるべきかを検討する企画会社ということで,ソニー,凸版印刷,KDDI,朝日新聞社の共同企画会社です.しかし,電子書籍がどうあるべきかという検討をするため,というよりは書籍というメディアでどうやって生き残るかという点から協力したように思われます.ソニーは電子書籍リーダーを販売していますが,iPadやKindleに比べるとその勢いは比較にならないほど弱く,凸版印刷もインターネットにコンテンツを奪われ,紙媒体のビジネスは厳しくなっています.また,KDDIはソフトバンクやNTTドコモに比べるとスマートフォンの導入や携帯書籍など魅力あるサービスという点で劣っていますし,朝日新聞社は広告収入と購読者の激減によって厳しい経営状態です.そう考えると,活字ビジネスにおいてこれら4社すべてが苦しい状態から抜け出そうと,苦肉の策で作りだした会社に思えて仕方ありません.
もっと広い意味での電子書籍ビジネスの検討,例えば,日本においてどのように各社システムを連携してコストを下げることが可能か,また,どのように他社のコンテンツもユーザにシームレスに販売できるかなど,最終的にユーザが恩恵を受けるような電子書籍配信事業となることを議論してくれるなら大変結構なことです.間違っても,業績不振分野の企業が傷を舐め合って結託し,独占価格などが設定されるようであってはなりません.
しかしながら,今回設立された会社が各業界から1社ずつ参加しているとう状況から察すると,上に述べたような電子書籍配信事業のためのコンソーシアム的存在ではなさそうです.そうなると,同じような会社が他企業によって連立し,結果的にいくつかの販売方法が共存するようなとんでもない事態にならないとも限りません.コンテンツを販売経路によって独占されて困るのはユーザです.そのようなビジネスをする時代ではもうありません.この会社,そして,同業者で同じような状況にある企業には,その点を踏まえて電子書籍配信事業を活性化させて頂きたいと思います.さらにもう1点,日本の会社だけでなく,海外の会社も交えて世界中の書籍を低価格かつ簡単に購入できるようにもして欲しいものです.
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