2010年5月11日火曜日

せつないクラウドコンピューティング

クラウドコンピューティングとは,コンピュータの機能をネットワーク内の資源によって実現する仮想コンピュータ環境です.ユーザは最低限の機能を持った端末とネットワーク接続環境さえあれば,あたかも全ての機能をその端末が提供しているように感じながら利用できます.どこまでの機能をネットワーク内の資源に任せるかによって,IaaS(Infrastructure as a Service),PaaS(Platform as a Service),SaaS(Software as a Service)などとサービス形態が区別されます.IaaSはハードウェアの機能自体をネットワーク内資源に提供してもらいますので,ユーザはその環境に好みのオペレーティングシステム(WindowsやLinuxなど)を導入して利用します.したがって,ユーザはネットワーク接続環境とキーボード,マウス,モニタなど入出力装置がある端末さえ用意すればよいことになります.PaaSはプラットフォーム,すなわち,多くの場合オペレーティングシステムなどの実行環境をネットワーク内資源に提供してもらい,ユーザは好みのアプリケーションを導入して利用します.SaaSはアプリケーションパッケージ(Office Web AppsやGoogle Appsなどが有名)などをネットワーク内資源に提供してもらい,ユーザのコンピュータ端末にインストールすることなしにそれらのアプリケーションサービスを利用することができます.

クラウドコンピューティングは,このようなコンピュータの機能をネットワーク内に分散させて利用しますので,ネットワークに接続さえできれば原理的に何処でも利用できますし,機能の拡張および縮小も容易です.しかし,実際にそれらの機能を提供している資源がネットワーク内の何処にあるのかはわかりません.コンピュータ資源が雲(クラウド)で覆われているようなサービス実行環境なのでクラウドコンピューティングと呼ばれているわけです.

クラウドの概念は様々なケースに応用できます.例えば,最適な電力量を多様な電力供給源から提供できるようにするスマートグリッドは典型的なアプリケーションです.また,テレビも近い将来単なるモニタになってしまい,ハードウェアの機能はネットワーク内資源に任せて月々使用料を払うというようなサービスに取って代わるかもしれません.

このように考えると,よいことばかりに思えますが,私のように技術系のユーザは,使う/使わないにかかわらず何でも自分の手の届く場所にないと不安に感じるので,クラウドコンピューティングの利用者には向いていないかもしれません.もし,ネットワークトラブルが起こったら仕事ができないとか,現在利用しているサービスが廃止になったらどうしようかと考えてしまいます.一番気にすることは,コンピュータ(機能)の実態は見当もつかない場所に存在しているということです.目の前にあるのに触ることができないなんて,なんてせつない世界なのだろう,と感じてしまうのです.

何処にでもありますが,何処にあるかわからない,このようなコンピュータ環境に違和感なく溶け込めるようになるまでには,まだまだ時間がかかりそうです.

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