2010年5月14日金曜日

褒める教育

褒めることで子供の学力を伸ばすというのは昔から言われている言葉です.一般的に人間は褒められると嬉しいのでやる気が出て,その結果良い成果をもたらします.さらにそれによって,また褒められるという好循環を生み出すことから学力が伸びるのでしょう.直感的にはこの論理はわかりますが,実際にはそうなのでしょうか?

ある学校のクラスを学力的に均等になるように2つに分けて試験を行います.一方のグループには採点した答案を返却し,もう一方のグループにはひとりひとりの生徒に試験はよくできたとだけ言い,答案を返却しません.その後しばらくして,別の試験を行い,各々のグループに対して同様のことを行います.何回かこれを繰り返した後,試験の出来栄えを比較すると,褒めたグループの平均点の方が答案を返却したグループの平均点より高くなります.これをピグマリオン効果といいます.

この実験からも,褒めることによって学力が伸びるということは実証されています.ここで気になるのは,どんな場合も褒めれば学力は必ず伸びるのかどうかということです.多くの学校の試験のように初めから答えがある試験に関しては,勉強さえすれば学力は伸びるかもしれません.しかし,これは知識の習得の繰り返しに他なりません.問題の解き方が決まっていないものや,答え自体がない問題に関しては,いくら褒めても正解に行きつかないので成績はアップしません.そのような試験を受けた人自身も正解が得られなかった事実はよくわかっているので,試験はよくできたと言われてもその言葉を信用しないでしょう.

解答の導き方がわからないものや,正解自体がわからないような問題を解決するには別の方法が必要になります.研究もそうですが,問題を解くだけでなく,問題の意味を考える必要があります.すなわち,問われているものは何か,なぜそれを問うのか,他の類似した問題はなかったか,など思考が必要となります.このような場合,集団でブレインストーミングを行うと思いもよらない解決策が導かれることがあります.ブレインストーミングでは各々が好きなように意見を出し合い,出された意見に対しては決して否定しないというルールがあります.この点も大切なことで,否定されないということは自分の意見が間違っているという決断はされないことになります.否定されないが故に,ブレインストーミングにおいて自分の存在感を自覚することができ,これがまた次の意見を出すためにプラスにはたらきます.

以上のことから,褒めるにしても否定しないということにしても,結果的にその人の価値を他人が認めることとなりますので,それを実感することによって良い思考がなされるということがわかります.

0 件のコメント:

コメントを投稿