2010年5月17日月曜日

フリー(無料)の衝撃

「えっ,これもタダなの?」,と思えるようなソフトウェアがインターネット上には数え切れないほど存在しています.皆さんが公開しているホームページやブログ,さらには,電子メールアドレスも無料で提供されている場合が多いでしょう.このように,無料で様々なものを提供してはいるものの,ビジネスとして成立するという考え方がフリー経済モデルです.昨年出版されたChris Andersonの著書,「FREE」はこれについて詳しく述べており,今まさに,注目を浴びているビジネス手法です.

「フリー」の形態はおもに4つに分類されます.1つ目は,「2つ購入すれば3つ目は無料」,というようなフリーです.2つ目までの価格に3つ目の価格がちゃっかり上乗せされている場合です.ふたつ目は,「ユーザは無料でインターネット上のコンテンツを視聴できるが,広告も一緒に表示されるよ」,というようなフリーです.この場合,コンテンツ業者に広告料を払っている企業は商品価格にそのコストを上乗せしています.3つ目は,「基本パック版は無料だが,全機能を含むプレミアム版は有料だよ」,というようなフリーです.無料の基本パック版で試した人のうち,数人でもプレミアム版を購入してくれれば,その売り上げで他の基本パック版分のコストも回収します.最後の4つ目は,「貨幣価値的に本当に無料」,というようなフリーです.例えば,不要になった物を無料で誰かに提供する,自分の作成したソフトウェアをホームページ上に公開して無料で利用してもらうなどの形態です.

上記4つの「フリー」の形態について,Chris Andersonは,「直接的内部相互補助」,「三者間市場」,「フリーミアム」,「非貨幣市場」,と定義しています.4つ目の非貨幣市場に関してはお金が手に入らないのでビジネスではないと感じる方もいるかもしれません.確かに直接的にはそうですが,不用品を無料で提供することによって粗大ゴミとして捨てるための手数料が不要になる場合もありますし,無料ソフトウェアの提供によって評判,名声を得て,やがてそれがビジネスにつながる場合も考えられます.
このように,フリーという概念はユーザから見ると喉から手が出るほど嬉しく感じるところ,そして,多くのユーザに注目を浴びるところが重要であり,それをうまく利用することによってとてつもない富につながるところが衝撃的です.

今後,上記4つ以外にさらなるフリーの形態が創出されるかもしれません.また,そのような考え方が今の時代にとてもマッチしています.ただし,フリーを手にするためには何らかの個人情報,例えば,電子メールアドレス,性別,年齢層,居住地域などを提供しなければならない場合が多いので,自己責任の元で楽しんでいただきたいと思います.リスクとリターンはいつも背中合わせです.もし,それらの情報提供を拒むのであればサービスを受けなければよいだけです.選択の自由はユーザにあるのです.

参考資料:
[1] クリス・アンダーソン, "フリー-無料からお金を生み出す新戦略", NHK出版.
[2] 週刊ダイヤモンド, 第98巻12号, 2010 3/13.
[3] 苫米地英人, "FREE経済学入門-知らないではすまされない!世界を支配する「フリーミアム」の解説書", フォレスト出版.

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