アンビエントとは,情報通信分野におけるポスト・ユビキタス,すなわち,ユビキタスの次にやって来る社会的概念と考えられています.アンビエント(ambient)は,「周辺の,環境の」という意味ですが,人間と環境とが溶け込んだ社会を「アンビエント社会」と呼ぶようになるかもしれません.「ユビキタス社会」という言葉も頻繁に使われていましたが,私自身どうしても馴染めない表現です.というのも,ユビキタスは遍在するという意味ですので,「ユビキタス社会」は直訳すると遍在する社会,すなわち,どこにでもある社会という意味になってしまい,何を指しているのかよくわかりません.同じように,「アンビエント社会」は環境社会という意味になってしまい,ますますそれが何なのかわからなくなってしまいます.
語句の意味はさておき,「アンビエント・ミュージック」というものがあります.イギリスのブライアン・イーノというミュージシャンが唱えた音楽の概念で,その語が示すように「環境音楽」という意味です.この表現は理にかなっています.すなわち,アンビエント・ミュージックはさまざまな場所や状況に溶け込むのです.例えば,1978年に発表されたイーノの「Music for Airports」というアルバムは,時折聞こえる空港でのアナウンス,飛行機のエンジン音,人々が集まった時のざわめきなど,空港という環境に存在する音と一体となった音楽空間を作り出しています.しかしながら,それらの音を直接混合しているわけではなく,人間が聞いたときにそれが気配として伝わるような融合された音楽空間を実現するところに面白さがあります.
実際に,何かを表す「もの」自体を表に出すのではなく,その「もの」を気配として何気なく感じさせる,そんなアンビエント・ミュージックはいろいろなことに応用できそうです.眠気を誘うような音楽もその一種かもしれません.しかし,私が欲しいアンビエント・ミュージックは,聞いていると電子メールが着信したことを何気なく伝えてくれるようなものです.ほとんど病気ですね.
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