2010年5月18日火曜日

情報伝達手段

通信は情報伝達手段のひとつで,その概念は大昔から存在しています.例えば,遠隔地の情報伝達手段として飛脚がありましたし,緊急の場合は狼煙(のろし)を用いた中継伝達(マルチホップ伝送)も用いられました.情報伝達は何のためにあるかというと,人間の意思の疎通を図るためにあると考えることができます.インターネットをはじめとする電気通信が当たり前の世の中ですが,ここはひとつ基本に戻って歴史を振り返ってみたいと思います.

意思の疎通を図るためには身振り手振りによる対面コミュニケーションがあります.目の前に情報を伝達したい相手がいるので視覚的に意思を伝える手段です.しかし,目の前に相手がおらず,また,いつ近くに来るかわからない場合は何らかの形で伝えたい情報を残す必要があります.最も原始的な方法は骨や石を用いて壁や地面に絵や記号を描くことでしょう.このように情報を記録・保存することで非対面コミュニケーションを実現できます.しかしながら,ここでひとつ問題があります.遠くの人に時間をかけて会いに行き,身振り手振りでは伝えられないほどの多くの情報を伝達しなければならない時はどうすればよいでしょうか?そのように時間や場所の制約を受けない情報伝達手段として,文字や紙の発明があります.ここまで来るとかなり私達の生活に近くなりますね.

文字と紙があれば何でもできそうですが,様々な場所にいる人々に情報を伝達するためには必要枚数の紙に文字を書かなければならず,数が3桁を超えるとほとんど不可能です.これを解決したのが印刷術の発明です.印刷術によって1対多の情報伝達が可能となり,かつ,情報の記録性も大幅に改善されました.印刷術はドイツのヨハネス・グーテンベルクによって発明され,聖書を印刷したことで知られています.まさしく時間や場所の制約を受けず多数に情報伝達できる素晴らしい手段です.印刷術は発明されてから500年以上経った現在でも,大活躍していることを考えるととても息の長い技術です.最近では書籍を含め,紙媒体から電子媒体に移行してきたものも多いですが,印刷術はまだまだ続くと思われます.

その後,本格的な電気通信技術が研究開発され,モールス信号伝送,電話機,交換機,真空管の発明があり,情報伝達距離が飛躍的に延びました.この時点でようやく,現在の「通信」と呼ぶにふさわしくなってきます.そして,無線技術の進歩とともにラジオやテレビなどの放送が実現され,音声と映像の同報通信が可能になりました.

さて,情報伝達手段の歴史を振り返ってみましたが,情報は意思の疎通を図るために何らかの形で表現され,伝達され,そして,記録されることによって私達の生活に浸透してきました.今日では,このような3つの特徴をもつものはメディア(媒体)という言葉で置き換えられます.すなわち,メディアという概念は,人間の意思の疎通を図るために何千年(あるいは何万年?)もかけて進化してきた文化と考えることができます.これからもこの文化の進化には目が離せません.電気の次はどのような形に変化していくのでしょう.

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