昨日,JAXA筑波宇宙センターに行ってきました.JAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)は2003年10月に宇宙科学研究所,航空宇宙技術研究所,宇宙開発事業団の3機関が統合してできた組織です.筑波宇宙センターはこのうち宇宙開発事業団の施設を受け継いだもので,国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟においてミッションを遂行する宇宙飛行士の訓練場所でもあります.一般の見学では訪問できない研究室にもお邪魔することができ,大変勉強になりました.
宇宙空間において研究を行う理由として,大気や重力が無い場所での物質や生命の振る舞いを明らかにするということが挙げられます.特に面白そうな研究として,無重力状態での燃焼というものがありました.通常私たちが地上で見るろうそくの炎は,上部が比較的尖っていて下部が緩やかなカーブを描くような形,言い換えると,卵を少し縦方向に引き伸ばしたような形をしています.しかし,重力がほとんど無い場所ではほぼ球の形をしているのです.このような現象を詳しく研究することによって,宇宙空間における燃焼構造および燃え広がり方を解明することにつながります.また,無重力状態での氷の結晶成長という研究も魅力的でした.日常生活では氷の結晶自体あまりお目にかかりませんが,小さい頃雪の結晶を顕微鏡などで観察して,いわゆる雪印マークを楽しんだ方もいることでしょう.そのような結晶は冷却とともに成長していきますが,その成長の仕方が地上と比べてどう違うのかということを解明する研究です.地上では結晶周辺に起こる液体の流れなどがあるため,結晶成長の過程が乱されますが,無重力ではそれが起きませんので精密な結晶成長の観察が可能となります.
この他にも,わくわくするような研究がいろいろありましたが,それらについては機会を見てブログに掲載したいと思います.宇宙開発に関わる予算が莫大なものであるのはご承知の通りですが,宇宙科学研究には欠かせないものです.一大学や一企業だけではとてもできるものではありませんし,一国だけでも難しいかもしれません.基礎科学研究は今すぐに役に立つ応用研究ではありません.しかし,それらの予算を削って目先の研究開発だけを行ってしまうと,将来の応用研究はどんどん先延ばしになってしまし,いざ必要になった時には手遅れという事態も招きかねません.海外への研究者流出を増やさないためにも,中長期的に見て重要な研究課題を正しく判断してもらえる学識者を国家予算審議の中核に据えて欲しいと思います.
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