現在,皆さんが使っている携帯電話のほとんどが第3世代(3G)であることはご存知のことでしょう.国際電気通信連合(ITU[1])はこれを「IMT-2000[2]」という名前で規格化しました.”2000”という名前がつけられた理由は3つあります.西暦2000年のサービス開始,使用周波数帯が2000MHz帯(2GHz帯),そして,データ通信速度が2000kHz(2Mbps)ということです.そして,IMT-2000を国際標準とするために1つの方式で規定しようとしていました.
ところが,実際にサービスが開始されたのは2001年.これはNTTドコモが世界に先駆けて行いました.しかし,当時の技術ではデータ通信速度は2Mbpsも出ませんでした.また,使用周波数帯も2GHz帯だけでなく,800MHz帯,1.7GHz帯,さらには,2.5GHz帯にまで及ぶこととなりました.そして,国際標準として規格化されたのは1つの方式ではなく,なんと5つの方式です.IMT-2000がやろうとしていたことはほとんど実現されなかったのです.こうなってしまったからでしょうか,いつの間にかIMT-2000という言葉は死語となり,3Gと呼ぶのが一般的になったように思えます.
このように,国際標準というものは,なかなか当初の予定通りにうまくいくものではありません.政治的問題,文化の問題,技術の問題,特許の問題等さまざまな要因が重なり合って1つに決めることができず,妥協した結果マルチスタンダードとなってしまうのです.結果的に1つに絞ることができないのであれば,国際標準と呼ぶのはやめた方がよいですね.
現在の携帯電話は,3.5Gが主流になっており,今年度中には3.9Gのサービスが開始される予定です.3.9GはLTE[3]ともよばれ,4Gへの移行を意識した3Gの最終形です.もちろん,4Gの国際標準化も進められている最中ですが,IMT-2000のようにマルチスタンダードではなく,本当に1つの方式で標準化され,同じ携帯電話端末を用いて全世界何処へ行っても同等のサービスが受けられるようになることを期待します.
略語の説明:
[1] ITU: International Telecommunication Union
[2] IMT-2000: International Mobile Telecommunication 2000
[3] LTE: Long Term Evolution
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