電話回線ではなく,インターネットを利用した音声通信サービスをVoIP(Voice over IP)と呼びます.日本のインターネット・サービスプロバイダでは,「050-」で始まる電話番号を割り当ててVoIPサービスを提供しているところもあります.この場合,家庭内やオフィス内のブロードバンドルータ[1]にVoIPアダプタという機器を接続(または内蔵)することによって,通常の電話機をそのまま使うこともできます.ただし,電話回線に接続された電話端末と通話を行うためには,途中でインターネットと電話回線を中継するゲートウェイというものを介して行います.インターネット内に閉じた電話端末どうしの通話であれば通常無料ですし,電話回線に接続された電話端末との通話でも格安です.「050-」で始まる番号ではなく,通常の電話番号をそのまま使用できるVoIPサービスが電話会社やCATV会社によって提供されていますが,その場合は電話回線に比べると割安感があるという程度で,無料とまではいかないようです.
電話番号を割り当てたインターネット上の音声通話サービスだけがVoIPではありません.例えば,SkypeやWindows Live メッセンジャーなど,登録されたユーザどうしが特定のソフトウェアを用いて音声通話サービスを行うのも,広義のVoIPです.例えば,スマートフォンにSkypeアプリケーションをインストールして,家庭内の無線LAN経由で音声通話を行えば,無料通話が実現できます.実際,私もiPhoneを用いてこの方式で海外の方と無料通話をよくします.しかし,一歩外に出て無線LANに接続できない環境,すなわち,3G回線を用いた環境では,Skypeは利用できませんでした.ところが,つい最近これが可能となったのです.iPhone向け公式アプリ「Skype2.0」は3G回線でも利用できるので,スマートフォンのパケット定額制プランに加入している人であれば,外出中でも無料で通話ができるようになったのです.ただし,「携帯ネットワーク回線経由のSkype同士の発着信は,少なくとも2010年8月まで無料」とあるので,その後は有料になる可能性があるわけですが.たとえそうであったとしても,この試みは歓迎されるものですし,有料になったとしてもべらぼうに高い使用料になるとは思えません.おそらく,月数百円くらいの定額制料金になるのではないかと思います.
ここまでは,料金の話でしたが,すこし技術的なことを考えてみましょう.もともと電話回線をベースにパケット通信を行い,インターネット接続を実現してきたわけですが,そのインターネット接続を用いてさらに電話サービスを行うという,何とも不思議な構造になっています.これなら初めから電話回線などやめてしまい,音声通話サービスはデータ通信サービスのひとつのアプリケーションという位置づけにしてしまったほうがすっきりします.ただし,その場合モバイルWiMAX[2]などのサービスとの差別化を行うのが難しくなってきますが.このように考えると,携帯電話網と呼ぶインフラは消滅し,携帯電話は単なる移動体通信回線を用いた音声サービスという概念になっていくことでしょう.「携帯電話」という語も死語となる日が近いかもしれませんね.
用語の説明:
[1] ブロードバンドルータ: 家庭内やオフィスのネットワークとインターネットを接続するネットワーク機器.
[2] モバイルWiMAX: 移動体通信を想定した高速無線ネットワークシステムのひとつ.携帯電話システムのように,無線基地局と電波が通じるエリアで利用可能.
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