2010年7月3日土曜日

プログレスがドッキング失敗!

2010年7月2日,ロシアのプログレスが国際宇宙ステーション(ISS: International Space Station)とのドッキングに失敗したとの報道がなされました.プログレスとは,無人貨物船で宇宙飛行士の食糧や衣類,さらには,実験装置などの輸送手段として開発されたものです.スペースシャトルが無くなってしまった現在,このような無人貨物船とISSとのドッキング技術はとても重要なのです.ニュースによると,プログレスはISSから3kmほど離れて通過し,現在はISSと同じ軌道上におり,再びドッキングを試みるそうです.

ドッキングをする予定だったにもかかわらず,3kmも離れていたというのはランデブー(接近)すらもできていない状態です.ISSの船長によると,プログレスは制御できない状態で回転し,視界から消えたそうです.自動ドッキングシステムが機能せず,手動でも制御不可能だったとのことです.

日本にも無人貨物船としてHTVというものがあり,昨年ISSとのドッキングに成功しています.日本よりもはるかに宇宙開発が進んでいたロシアですら失敗してしまったというのはかなりショックです.もしかすると,日本の技術がロシアの技術を追い越してしまったのでしょうか?

ところで,皆さんはこのように無人貨物船が空中でISSとドッキングしていたという事実はご存知でしょうか?スペースシャトルは人間が実際に搭乗するのでうまくコントロールしてくれそうですが,400kmもの上空でしかも無人で宇宙船同士がドッキングするなんて凄い技術です.数十年昔のウルトラセブンの世界がよみがえります.私達が知っている以上に宇宙開発はどんどん進んでいます.これからの10年間はどんな夢が実現されていくのか楽しみです.

2010年7月2日金曜日

Mac OS X 消滅か?

iPhone,iPad,iPodで有名なアップル社ですが,このようなモバイル端末だけでなくiMacというパソコンも有名で,マニアには根強い人気があります.そのiMacに搭載されているOS(Operating System)であるMac OS X(マック オーエス テン)が消滅するという噂があります.Mac OS XはBSD UNIXベースで作られたOSで,2001年にUNIXとしての認証を受けています.非常に独特のOSに感じるのは,UNIXというよりGUI(Graphical User Interface)で,WindowsやLinuxと比べるとやはり使い勝手がかなり異なります.そんなMac OS Xのリブランディング,すなわち,名前の付け替えが行われるらしいです.iPhoneのOSをiOSと命名したこともあり,商品によってiOS desktop,iOS server,iOS mobileなどとブランド名が変更になる可能性が大きいそうです.

確かに,「i」で始まるOSという意味では,面白いブランド戦略だと思います.アップル社の各商品名も「i」で始まりますから.しかし,「i」で始まるネーミングはアップル社だけではありません.有名なGoogleもiGoogleというサービスがありますし,その他,検索してみると,そういえばこんなのもあるなあ,というのがいっぱい出てきます.今となっては,「i」で始まるものがアップル社と関係すると言うには少し無理があるように思えます.

とはいえ,ブランド戦略というのは非常に重要です.最近ではあまり言わなくなりましたが,昔は「コピーをとる」と言う代わりに「ゼロックスを取とる」と言ったり,「ティッシュ」のことを「クリネックス」と言ったり,今思うととても滑稽です.しかし,会社名や商品名が動詞として使われるようになると,そのブランド力はとても強いものになります.もうひとつの面白い例ですが,皆さんもよくご存じのドラッグストアー,マツキヨです.正式名称は「マツモトキヨシ」と言いますが,この名前は完全なブランド名になっています.しかし,よく考えてみるとこれは創業者の松本清さんの名前そのものです.松本清さんは千葉県松戸市長にもなった方で,「すぐやる課」を作ったことで有名です.彼は千葉県議時代に選挙で名前を売るため,店名に自分の名前を付けてマツモトキヨシにしたというので,ここでもブランド名の威力が発揮されているのがわかります.

ブランド名というのはいろいろな使われ方があるようです.認知力を広めるにはネーミングがとても大切です.しかし,いったん悪名がついてしまったらそれを消すのは至難の業ですね.その時は,また,名前を変えればいいのかな?

2010年7月1日木曜日

SIMロック解除

2010年6月30日,総務省は「SIMロックの解除に関するガイドライン」を発表しました.

携帯電話の契約者であることを示す情報が埋め込まれたSIMカードというものが携帯電話には差し込まれています.このカードはどの通信事業者のものでも同じ形をしていますが,日本では契約していない通信事業者の携帯電話に差し込んでも利用できないようになっています.これをSIMロックといいます.しかし,特に欧州の国の多くではこのような制限が外され,どの通信事業者の携帯電話でも利用できるようになっており,このような使い方ができるようにすることをSIMロック解除とよびます.

総務省はSIMロック解除に向けた意見募集を5月から約1か月間行い,その調査結果を踏まえて今回のガイドラインが発表になりました.では,結果はどうであったかというと,「本ガイドラインの位置づけ」として,以下のように述べています.

『本ガイドラインは、事業者に対し、SIMロック解除を強制するものではないが、事業者は、SIMロック解除について、本ガイドラインに沿って、利用者の立場に立った取組に努めるものとする。』

このガイドラインの位置づけは極々当たり前のことが書かれているだけで,事業者が拒めば何ら現在の状況から変わらないことを示しています.利用者の立場に立った取組に努めると言ったところで,たとえ務めなくとも強制力はないので意味がありません.こんなガイドラインを作るようでは,日本の携帯電話のガラパゴス化は解消されず,ますますグローバル社会についていけなくなりそうです.

総務省のガイドラインがどうであれ,巷ではSIMロック解除が進んでいます.特に,今,売れまくっているiPhoneはSIMロック解除方法までインターネットサイトで公開され,ソフトバンクでしか使えないはずのiPhoneにNTTドコモのSIMカードを差して使っている人も大勢いるようです.技術的に解除されるのであれば,はじめからロックなんてしなければよいですよね.

今回のガイドラインが発表されたことで,ある携帯電話端末に限ってSIMロック解除を正式に認める通信事業者が出てくる可能性があります.そのような端末がユーザにどのように受け入れられるか,その評判が市場原理となって今後の標準化に大きく影響していくことでしょう.もし,どの通信事業者もSIMロック解除を認めなかった場合,一番被害を受けるのは私達ユーザです.なぜなら,海外に行って携帯電話を使う場合,そのまま日本で使っている携帯電話+SIMカードで国際ローミングをすると,場合によっては1日何十万という料金が発生することもあるからです.しかし,SIMロックが解除されれば渡航先の国でプリペイドSIMカードを買って使えばよく,全く無理のないコストで携帯電話の利用が可能となります.さらに,日本国内でも通信事業者に縛られることなく好きな携帯電話端末を利用できるようになります.このようなことができないだけでも十分利用者の立場に立った取組ではないことがわかるでしょう.すなわち,通信事業者がSIMロックを解除しない場合は,今回のガイドラインに沿った取り組みに努めていないことになります.しかし,強制力がないから何も変わりません.そんなことにならないよう,日本の通信事業者にはよく考えてもらいたいものです.

「SIMロックの解除に関するガイドラインの公表」に関するホームページ:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban02_02000046.html

2010年6月30日水曜日

制携帯って何?

「制携帯」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「制服」ならありますね.「制携帯」とは学校指定の携帯電話です.2009年1月30日に文部科学省は「学校における携帯電話の取扱い等について」,という通知を行いました.小学校及び中学校において,学校への携帯電話持ち込みを原則禁止し,高校における携帯電話の使用を制限するというものです.この携帯電話の禁止・制限では,情報モラル教育の取り組みとして,ネット上のいじめや違法・有害情報から守る,ということを重要視しているようです.

このような通知を受けてのことだと思いますが,学校指定の携帯電話,「制携帯」を義務付けて教員・生徒間や生徒同士の通話・電子メールに使ってもらうという試みが,ある私立中学・高校で始まりました.そう,教員も「制携帯」を使うそうです.学校側の意図としては,携帯電話を禁止するよりも正しい使い方を教えることが重要だとしてこの制度を実施したそうです.月額使用料はかかりますが,定額サービスを利用しているため通話料は無料だそうです.携帯サイト閲覧に関しては時間による制限やフィルタリング設定があり,また,ネット上のいじめなどの問題が発生した場合には保護者の了解のもとに学校が履歴を閲覧したりGPSで居場所を取得したりできるとのことです.

文部科学省が携帯電話の使用に関して口を出すこと自体理解できませんが,学校指定の携帯電話を導入することもどうかと思います.「制携帯」を使うことで携帯電話の正しい使い方が学べるのでしょうか?生徒にとっては「制携帯」とは別に自分の携帯電話を持っているのが普通であり,その携帯電話の使い方が正しくないと言われても受け入れられるはずがありません.

この学校の生徒会が2009年に行ったアンケートによると,「制携帯」は使いたくないという生徒が3割以上だったとのことです.一方,この制度が開始されてから保護者に対して行ったアンケートでは,9割が肯定的だったそうです.学校側は,教員と生徒のコミュニケーションが楽で密になり,生徒も家で勉強がわからない時は教員にメールすることが増えている,と話しています.生徒が家で勉強しているときにわからないことがあるからといって,教員にメールするようなことをされたら教員はたまったもんじゃありません.教員の方が精神的にダウンしてしまいそうです.

禁止・規制で物事を解決するのではなく,正しいやり方を指導するというアプローチは賛成です.しかし,何が正しいやり方であるか学校側は本当にわかっているのでしょうか?文部科学省は情報モラル教育の取り組みを謳っているようですが,まず,教員の情報モラルはどうなのでしょうか?携帯電話のメールもまともに使いこなせないような教員が,生徒に対して情報モラル教育などできるわけがありません.情報モラルだけの問題ではありません.家で勉強がわからない場合にそれを教員にメールで聞くようなことを「良し」とするなどめちゃくちゃです.わからないことがあれば,授業中に聞くという教育を,まずはじめに行うべきではないでしょうか?

「制携帯」や国民番号制など,組織による監視制度が浸透していくと,日本は危険な状態に陥りそうで怖いです.

2010年6月29日火曜日

視覚の不思議

私達は目という感覚器官を通して3次元構造の様子を見ることができます.このような現象を視覚と言うのはご存じのとおりです.外界の3次元映像が光となって網膜に像を結び,その信号が視神経を経由して脳で理解されるためにその様子を知覚します.ところが,網膜像は2次元構造なので,もともとあった3次元の情報は失われています.しかし,脳はその2次元情報から3次元情報を作り出しています.次元の低い情報から次元の高い情報を生み出すことは理論的に不可能であり,そのような問題を不良設定問題と呼びます.2次元情報を無理やり3次元の情報に作り変えるには何らかの仮定を設定しない限り不可能なのです.しかし,視覚に関するこのメカニズムは現在解明されていません.

外界の3次元構造から2次元の網膜像を得ることを光学,逆に,2次元の網膜像から外界の3次元構造を推定することを逆光学と言うことがあります.そして,後者を視覚情報処理とも呼びます.視覚情報処理では,触った感覚などこれまでの経験から,2次元情報の意味する内容を仮定し3次元に変換しているのかもしれません.どのような仮定があるのかははっきりしませんが,実際に私達は奥行きという情報を視覚によって得ていますので,「何か」は必ずあるのでしょう.しかし,もしそれが本当に経験に基づく仮定だとすると,私達が見ている3次元構造は実物なのでしょうか?もしかすると全く異なるものなのかもしれません.ある研究で,上下左右が反対に映るメガネを何日もかけて生活するという実験をしたところ,最初,被験者は気がおかしくなりそうだと言っていたようですが,次第に慣れて通常の生活ができるようになったそうです.この実験結果からも,実際に視覚によってもたらされた映像が実物と上下左右が反対だとしても全く問題ないことがわかります.

このように考えると,人間の五感といわれるものは単なるセンサにすぎず,実際は予想もできないような変なものを感じているのかもしれません.しかし,私達がそれを知ることができない以上,そんなことあり得ないと言い続けることも可能なのでしょう.真実とは一体何なのでしょうかね?

2010年6月28日月曜日

国際宇宙ステーションを見る

これまで多くの宇宙飛行士が滞在してきた国際宇宙ステーション(ISS: International Space Station).この夢を乗せた宇宙船は地上約400kmの高さに位置しており,約90分で地球を1周します.ある意味,巨大な人工衛星ということができますが,それは本当にデカイです.ソーラーパネルを広げた姿は,ほぼサッカーグラウンドと同じ大きさです.こんなに大きなものなら見えるのでは?と思ってしまいますが,実は肉眼で見えるのです.条件がそろえば,日の出前と日没後2時間ほど日本で見えます.宇宙航空研究開発機構(JAXA)では,いつ,どこからどの方角に見えるかという情報を提供していますので,是非JAXAのホームページを訪れてみてください.

また,ISSを写真に撮ることもできます.レンズの絞りを開放し,ピントを無限大に設定可能であればデジカメでもOKです.ただし,三脚は必須です.これらについても,JAXAのホームページで詳しく教えてくれています.撮れた写真をJAXAに送ると,ホームページに載せてもらえるみたいです.しかも,名前入りで.あまり多くの応募があるとすべてを載せてもらえなくなるかもしれませんので,今のうちにチャレンジしてみてはいかがでしょう.いい思い出になりますよ.

「国際宇宙ステーションを(ISS)見よう」のホームページ:
http://kibo.tksc.jaxa.jp/
「国際宇宙ステーションを写真に撮ろう」のホームページ:
http://iss.jaxa.jp/iss/map/issphoto.html

2010年6月27日日曜日

古くて新しい音楽

「あれっ?これってすごく懐かしい!」,と何度口に出したことでしょう.最近,大学生が使っているパソコンや携帯音楽プレーヤから流れてくる音楽を聴くと,20~30年前に流行った曲であるということが多いです.何故そのような曲を知っているのかと聞くと,アニメの主題歌であったり,インターネットで何気なく紹介されていて気に入ったとか,さらには,カバーされた曲のオリジナルだったりとかが理由だそうです.面白いことに,自分の親が聴いていた曲だったから,という人はひとりもいませんでした.このようにして出会った音楽は時代的には古くても,彼らにとっては新しい音楽なのでしょう.

「古くて新しい音楽」という現象が起こっているのは,音楽がデジタル化されて音質が劣化せずに今日でも聴くことができる,というのも一つの理由でしょう.CDが無かった時代では,音楽はレコードというメディアで供給され,それをカセットテープに録音して聴くというのが一般的でした.しかし,このようなアナログ世代の音楽は,今聴くと明らかに音質が悪く,それ自体が古さを感じさせてしまい,人によってはそのような音楽を受け付けなくなってしまうことがあります.しかし,CDというデジタル世代に作られた音楽は,メディアが変わったとしても当時の品質が保たれているため,古さをあまり感じないのでしょう.

このような品質に関わること意外に,音楽の販売方法に関しても大きな違いがあります.インターネットで音楽を購入するようになる前は,CDという十数曲がパッケージ化されたアルバムという形で音楽を購入するのが一般的でした.ところが,インターネットによる音楽のダウンロード販売が開始されると,音楽は曲単位で買われるようになりました.それもそのはず,あまり好きでもない曲を含むアルバムを買うくらいなら,気にいった曲だけを買えばよいというのは極めて合理的な判断です.このような販売の仕方を考えると,アルバムという概念はあまり重要ではなく,歌手名や音楽の種類を中心に曲が選ばれるようになります.そうなると,たとえ何十年も前の曲でも,音楽の種類で検索するとそれらがリストに入ってきます.何気なくそれらを視聴してみると自分の好みと一致して,誰が歌ったとか,いつの歌だとか関係なく購入するということがあたりまえになります.これによって,発売時期は古くても本人にとっては新しく発見した音楽ということになります.

このように考えると,有名歌手というブランドや発売された時期などに左右されるような音楽の視聴方法は減ってきて,自分が気に行ったものを買うという,本当の意味で個人の嗜好が反映された音楽の楽しみ方が一般的になってきたといえます.アマゾンなどのオンライン書籍販売において,売れどころの本だけが収入源ではなく,莫大な量の昔の本や少しのユーザにしか売れない本による収入が大きな利益を生み出しているという,「ロングテール」という現象があります.これは,書店のように限られたスペースにすべての本を保存する必要が無くなったオンライン書籍販売ならではの現象です.これと同じことが音楽のオンライン販売にも起こっているということができるでしょう.デジタル化された情報であれば,「もの」は一つだけ電子的に存在すればよく,あとは購入者がそのコピーをダウンロードするだけなので場所を取りません.もちろん,情報を保存するためのハードディスク容量はさらに大きくしていく必要がありますが,小型化の技術や大量生産の恩恵に預かり,ハードディスクのコストは無視できるほど小さくなります.本当に良い時代になりました.

すべての古いメディアがデジタル化されて,新しいメディアとともに同じ電子の棚に並べられるかどうかはわかりませんが,これまで以上にそれが増えていくのは間違いないでしょう.その時必要になってくるものは,とてつもなく多くのメディアから一番よいものを中身を見ずに選択することができる技術,ということになるでしょう.