2010年6月26日土曜日

新30年ビジョン

「新30年ビジョン」,なんと素晴らしい言葉でしょう.最近では経済的に明るい話がほとんど出て来ませんが,30年後の2040年のビジョンについて語るとは.これを語ると言うことは,もちろん明るい話題であるはずです.

2010年6月25日,ソフトバンクの孫正義社長が1981年の会社設立から30年にあたるまさに今,これから30年後という長期的ビジョンを発表しました.「やるな~!」と思うのは,30年後に会社を時価総額200兆円規模にするということです.30年後の経済なんてどうなっているかもわかりませんが,このようなギョッとするような発言をするとは,さすがにのりにのっている会社の社長です.たとえ不可能だとしても,このようなスカッとするようなことを言ってもらえると明るい未来を感じます.この新30年ビジョンに含まれるもう一つの目玉は,現在800社という戦略パートナー企業数を5000社に増やしたい,といったことです.戦略パートナー企業5000社というと,規模的には世界有数,もっというと,世界で誰もが知っているような大企業です.孫社長曰く,世界でトップ10に入る企業を目指すそうです.

孫社長は現在52歳で,30年後は82歳です.そうなるととてもじゃないですが,第一線の経営者であるはずがありません.「なんと無責任な発言?」とも思えましたが,そこはさすがの孫社長,ちゃんと考えていました.来月から後継者養成のための「ソフトバンクアカデミア」という学校を開校するそうで,自ら週1回の指導にあたるということです.これだけ世間を湧かせている社長が忙しくない訳がありません.その社長が週1回のペースで,後継者養成学校にて指導をするというのはかなり本気です.本当に凄い人は,重要なことを部下には任せず,自分から現場に出向いて哲学を伝授するのですね.

ふと思ったのですが,「ビジョン」という言葉はとても有効な言葉ではないでしょうか?それ自体夢を感じますし,また,実現できなかったからといって非難されるようなものでもありません.なぜなら,”vision”という英語の意味は,「見通し,展墓,空想,幻」などであるからです.政党が掲げる「マニフェスト」なるものも,衆議院議員の任期に合わせて「4年ビジョン」とでも言っておけば,あまり叩かれなくてすむのではないかと思いました.

2010年6月25日金曜日

大学にも広告を!

1週間ほど前,新聞の広告費が減ってきたというブログを書きましたが,新聞に限らずテレビ,雑誌,ラジオの広告費もここ5年間では確実に減少しています.その反面,インターネットの広告費は右肩上がりで,今や最も効率のよい広告メディアとされています.広告はおもに3者間の利益循環から成り立っているということができます.すなわち,広告主,広告場所提供者,広告閲覧者です.広告主は広告による商品やサービスの消費者への認知と購買を期待し,広告場所提供者は広告場所というインフラを広告主に提供することで収入を得,広告閲覧者は何かのついでに広告が目に入ることによって労力を使わなくとも情報が入って来ます.広告場所というインフラは一般的にメディアということになっていますが,何もメディアにこだわらなくてもよいと思います.多くの人が注目する場所であれば,何でもビジネスにすればよいのです.

一つの提案ですが,大学の教室に広告を出すことで,大学が収入を得るというビジネスはどうでしょうか?授業中,学生は教員の方を向いているわけですので,教室の黒板側に電子的な広告を出すのです.理工系学部ではコンピュータ画面をスクリーンや大型ディスプレイに映して講義をする教員が多いので,そのスクリーンや大型ディスプレイを広告に利用すれば一石二鳥です.間違いなく学生はそれらの広告に目が行くでしょう.大学側が,「そんなことをしたら勉強に身が入らない」,などと言うのであれば,それは明らかに大学の授業がどういうものかわかっていない発言です.1コマ90分の授業を最初から最後まで集中して聞いていられる学生などほとんどいません.また,広告もいくつかの種類に限定してサイクリックに表示すれば,その段階で広告を見るのをやめてしまうはずです.むしろ,ちょっとした息抜きになる映像が何気なく視界に飛び込んでくることで,それを見終えた後は逆に集中力がアップするものです.さらに,そのような広告場所を提供することで大学の収入源にもつながりますし,その収入を利用して学生へのサービスを充実させることもできます.企業も大学に特化した広告を出せるということで,新たな戦略的営業が可能になります.学業を行う場だから広告はふさわしくない,というような時代はとっくの昔に終わっています.

少子化が進む中,大学経営も決して楽ではない時代です.だからこそ,これまでの古い慣習や根拠のあいまいなタブーにも踏み込み,新しい大学のスタイルを築き上げるべきでしょう.教育の場にビジネスが入るのを拒むのは変です.学校だってビジネスですから.実際,コンピュータルームに製造会社の名前が入ったパソコンやプリンタが置いてあるだけでも,無償で広告場所を提供しているのと何ら変わりません.それなら,初めからビジネス目的で広告場所を提供し,「この広告収入で学生へのサービスが賄われています」,ときちんと提示することで納得を得る方が有効ではないでしょうか?大学によっては,ホームページに掲載する広告を募集しているところもあります.ホームページ上に広告があってもよいなら,大学の教室やいたるところにあるディスプレイに広告があってもよいでしょう.

2010年6月24日木曜日

iPadの売り上げ

2010年4月3日にアメリカで発売されたアップルのiPad.ものすごい勢いで買われているようです.わずか80日間で累積販売台数が300万台を突破したとか.80日で300万台以上売れたということは,全世界で1日37,500台以上です.

iPadは3Gモデル,Wi-Fiモデル,3G+Wi-Fiモデルがあり,内蔵メモリ容量の違いまで含めると6種類のモデルがあります.価格は48,800円から81,800円とかなり差がありますが,販売台数の重みをかけた平均的な購買価格は70,000円です.この値段をもとに300万台分の売り上げを計算すると,なっ,なんと2,100億円です!たった一つの商品だけで80日間で2,100億円,1日平均26億円以上の売り上げですよ!

現在,アメリカ,カナダ,日本,オーストラリア,ドイツ,イタリア,スペイン,スイス,イギリスの9か国で発売中です.7月には,オーストリア,ベルギー,香港,アイルランド,ルクセンブルク,メキシコ,オランダ,ニュージーランド,シンガポールで発売開始予定.このままのペースでいくと,1年間の売り上げは一つの商品だけで1兆円を超える勢いです.確かに凄いです.

このiPadと関連して,日本でも電子書籍の販売ビジネスがどんどん増えており,iPadの購入をさらに加速させそうな雰囲気です.このブームはいったいどこまでいくのやら・・・.

確かにiPadは魅力的な商品なのかもしれませんが,とにかくこの売上高にびっくりしており,今何も考えられなくなってしまいました.今日のブログはここで終わりにします.眠れなくなりそうな予感・・・.

2010年6月23日水曜日

ハース効果

人間の耳は不思議なセンサです.耳というより脳と言うべきかもしれませんが,面白い現象を紹介したいと思います.今,2つのスピーカから等距離の位置で音を聴いており,2つのスピーカから同じ音が出力されているとします.当然,左右の耳から同じような音がほぼ同じ音量で聴こえるはずです.この状態で,片方のスピーカから出力される音の信号を少しだけ遅らせて(数十ms程度)再生したとき,どのような音が聞こえるでしょうか?実は,片側から遅れた音が聴こえるのではなく,遅らせていない信号が出力されているスピーカの方から,音が聞こえてくるように感じます.このような効果をハース効果といいます.すなわち,音の定位が中央からはずれ,最初に出力されたスピーカの方に移ります.人間の脳は遅れてくる音は聞かないような制御をしているようですね.

ここで面白いことを考えてみたいと思います.音と同じことを映像で行ったらどうなるでしょうか?今,2つのテレビが目の前に左右並んで置かれており,同じ映像が流れているとします.このとき,片方の映像を少しだけ遅らせて流した時,どのような映像を見ているように感じるのか,大変興味があります.ただし,このとき音は流れていないこととします.はたして,遅らせていない映像が流れているテレビのほうから映像が流れてくるように感じるのでしょうか?
このような実験を実際にやってみたことはありません.映像は光の信号として目に飛び込んでくるので,音の場合と同じように数十msの遅延をかけた場合その値が大きすぎてハース効果が現れないかもしれません.しかし,もっと遅延を小さくすると,もしかすると映像がやってくる方向もずれるなんてこともあるのかもしれません.ただし,人間の眼がどの程度の時間差まで検知できるのかに寄るかもしれません.

たわいのない妄想かもしれませんが,視覚に関してもハース効果のようなものがあるとすれば,体感する映像信号の進路が曲げられたことになります.実際には光は曲がっていないのですが,人間から見ると,時間的に少し異なる2つの同じ映像は,道筋を曲げられた1つの映像と考えることができそうです.この現象は,大きな重力があると光が曲げられるという一般相対性理論と似ています.実際に天体観測でこのような現象が観測されています.ある銀河系の裏側に強いエネルギーを出す天体があり,その天体の出す光が4つに分かれて見えるというものです.それら4つの光は同じ光を出していることが詳しい観測でわかり,しかもその光の変化に時間差があるということです.この現象を銀河系の後ろにある天体の立場に立って見た場合,異なる4つの光源から同じ光が少しだけの時間差を持ってやってきた時,ある1つの方向から来る光に見える,というように解釈できないでしょうか?

空想(妄想)に空想(妄想)を重ねた議論かもしれませんが,実際にこんなことがあったら面白いですね.映像に関するハース効果の”妄想”が一般相対性理論と大きく違うのは,強い重力というものを考えていないことです.しかし,こんなふうに科学と工学を結びつけて考えると,新たな発見ができるかもしれません.すぐ目の前に転がっているけど気づかない,そんなことが発見なのでしょう.

2010年6月22日火曜日

携帯で検索!

「携帯電話を利用する中学生の8割強が,携帯のネット接続で宿題のわからない点を調べている」,というニュアンスの記事が,2010年6月21日の朝日新聞朝刊に出ていました.iPhoneのようにパソコンと同じ検索サイトを利用しているならともかく,携帯電話の検索サイトは検索語を入力しても得られる結果が少なく,十分な情報が得られないはずなのですが・・・.

自宅でパソコンを使える環境がほぼ整いつつあるにもかかわらず,何故携帯電話で検索するのか不思議でした.とても気になったので最近のパソコン・携帯電話の利用法を調べてみると,中学生・高校生はパソコンをあまり使わないということが判明しました.文章を書くときも携帯電話で何百文字も打ち込み,それを電子メールで送信してパソコンで受け取るようです.そして,その文章の体裁のみを整えて印刷するという作業の仕方が一般的であるという情報を得ました.もし,これが真実だとしても,何故,わざわざ小さい画面で,かつ,入力しにくい携帯電話のキーで文字を入力するのでしょうか?答えは意外なものでした.現在の中学生・高校生はパソコンのキーボードを使うのが苦手なようです.使えないわけではないのですが,携帯電話のキー入力の方がはるかに速く入力できるのだそうです.また,普段から電子メール,ゲームなどで携帯電話を頻繁に利用するので,画面が小さいということに対してはほとんど違和感がないそうです.

正直,この事実には驚きました.パソコンを利用する年齢がどんどん下がっているので,今では小学生や中学生ですらパソコンを使いこなしているのかと思いましたが,違いました.もちろん,パソコンを使えないのではなく,個人で利用する携帯電話でほとんどのことができてしまうので,わざわざ家の共有パソコンを使う必要がないのです.そう考えると納得がいきます.そういえば,ある大学の教員から,携帯電話でレポートを書いて提出してくる大学生がいるという話も聞きました.大学のレポートとなれば,それこそ数行程度で済むものはほとんどなく,数十ページにおよぶものと考えられますが,それでも携帯電話でレポートが書けてしまうのです.

世代の違いとは恐ろしいものですが,このような状況は決して否定するものではありません.なぜなら,これこそがこの時代のライフスタイルだからです.パソコンが一番と考えるのはもう古いのかもしれません.それよりも問題なのは,検索することで答えが出てしまうような宿題を出す教員側です.授業時間内では十分に時間を取れない勉強も,宿題であれば可能です.したがって,インターネットで何かを調べてわかるような宿題ではなく,学生の思考を重要視する課題,すなわち,考えることに重点を置いた宿題を出すべきだと思います.検索してわかるようなものであれば,それこそ授業中に携帯電話で調べてしまえばよいのでは,と思います.授業中に携帯電話を使うことに違和感がある教員もいるかもしれませんが,iPadを授業に取り入れようとする学校もありますので,それが良くて携帯電話が悪い理由は見つかりません.授業中の携帯電話での通話は問題ですが,携帯電話もパソコンと同様,教材の一部と考える時代になったと思います.

2010年6月21日月曜日

バイノーラル録音

音楽を聴くときに,スピーカから聴くよりもヘッドフォンを用いて聴いたほうがより良い音に聴こえます.それは,耳に近いところに音源があるため,外部のノイズや変な反射が起きないからです.しかし,良いことばかりではありません.スピーカから聴こえる音は耳までの距離が左右異なるため,その到達時間の差によって立体感を味わうことができますが,ヘッドフォンの場合は左右の音がちょうど頭の中央に位置しているように感じ,頭内定位という現象が起きます.これは,頭の中で音が鳴っているように感じるため,大きなボリュームで長時間音を聴いていると頭が痛くなります.

この問題を解消し,かつ,臨場感を与えるために考案されたバイノーラル録音という技術があります.この録音方式は,人間の頭の形を真似たダミーヘッドという人形を用い,その左右の耳の中にマイクロフォンを設置します.こうすることで,実際に人間の鼓膜に届く音響信号に近い音で録音することができるため,その録音された音をヘッドフォンで聴くと立体感・広がり感が出るのです.また,左右それぞれの耳で聴こえる音を録音するので,頭内定位の問題もある程度解決されます.

バイノーラル録音には欠点もあります.人間は前からやってきた音か後ろからやってきた音かの区別もできます.これは,音源から左右の耳までの距離が微妙に異なるため,その差異が前後の判別に役立っているからです.しかし,バイノーラル録音では頭を回転させても音源も一緒に回転してしまいます.テレビ画面を見ている時にヘッドフォンでバイノーラル音声を聴いている際,頭を少し回転させたとしても前方から聴こえている音は常に本人の前方からしか聴こえないため,前後方向の立体感を味わうのが難しいです.さらに,ダミーヘッドを用いてバイノーラル録音された音は,ヘッドフォンと耳との間の音響特性とは異なりますし,また,ダミーヘッドと実際の人間の耳および胴体を含む音響特性も異なるので,完全に録音状態を再現することはできません.

このように,いくつかの問題点はありますが,実際にバイノーラル録音された音は臨場感のある再生できますので,音楽アルバムなどに利用されています.耳は音を受信するための感覚器官ですが,そこにマイクロフォンを置くことで臨場感を出すというアイデアはとても素晴らしいものです.

2010年6月20日日曜日

気温の定義

天気予報や天気ニュースなどで,その日の最高気温,最低気温が伝えられ,私たちはその値をもとに今日は暑かった,明日も暑いのかあ・・・,などとついつい口走ってしまいます.その「気温」についてですが,もう少し気のきいた伝え方ができないものかと常日頃感じています.

通常,「気温」というと,地上から1.5mほどの高さでファンがついている百葉箱の中の温度計が示す値を表します.しかし,誰がファンのついた百葉箱の中の温度を知りたいのでしょうか?私達が知りたいのは,外出先の温度,例えば,東京駅八重洲口の外や,上野動物園のサルの前など,ある場所での実際の温度です.東京の百葉箱の中の温度が33℃だからといって,東京の気温が33℃と言われても役に立ちません.実際の上野動物園で太陽の直射日光が当たる場所は38℃だったりするわけですから.

統計を取る上で気温の測定条件をいつも一定にするのは結構です.しかし,それらの値を天気予報や天気ニュースで知らせても私達にとっては重要な情報ではないのです.せめて,アスファルトの反射で最も熱くなりそうな代表的な場所の温度などを報告して欲しいものです.

現在,小型化された温度センサや携帯電話に代表される常時利用可能なネットワークがあるのですから,様々な場所の温度をリアルタイムで収集し,インターネット上に配信するのは簡単です.例えば,携帯電話に温度センサを内蔵することなど朝飯前ですし,数十分に1回くらい位置情報と温度・湿度情報を送信してもほとんどコストもかかりませんし,バッテリーの消耗も気にするほどではありません.そのようなデータがすべての携帯電話から集められれば,統計的にかなり良い精度の気象データベースが構築できます.

そのようなユーザ参加型のアプリケーションがもっと増え,あまりケチケチした考え方をせず,みんなのためのみんなの貢献という考え方が浸透すると,豊かなモバイルライフが実現するのではないでしょうか?