2010年6月19日土曜日

中途半端なIT化

組織の中では相変わらずお役所仕事と言わんばかりに,検印の習慣が根強く残っています.何故日本人はこれほどまでに,印鑑を押すことに固執するのかさっぱりわかりません.外国では本人が確認したことを証明するのにサインをします.サインだと他人が真似をして書く恐れがあるというのであれば,誰でも簡単に同じものを作れる印鑑の方がはるかに問題です.おかしなことに,外国人であれば印鑑でなくともサインでよいという状況すら多々あります.一体このようなシステムを運用している組織は何を考えているのか不思議で仕方がありません.

先日,クレジットカードを申し込むときに,申請書に記載する銀行口座番号を間違えたため,わざわざ訂正印を押して修正しました.その後,カード会社は書留郵便でその申請書を送り返してきて,修正印は銀行の登録印で行うようにとのことでした.しかも,審査は既に終わっていることも記載されていました.さらに,数日以内に検印の上返信を行わない場合,申請書は無効になるとのことです.「何様だ,ばかやろう!」と言いたくて仕方がありませんでした.せっかくそのカード会社でクレジットカードを「つくってやろうと思っていたのに!」です.その段階でカードを作るのを辞めてしまうと,それまでの雑用が無駄になってしまうのと,そして,年会費が無料だということだったので素直に言われたとおりにしましたが.

もっとおかしな話があります.組織における書類を提出する際,文章の作成はコンピュータで電子的に行えるのに,いざ提出するとなるとそれを印刷して印鑑を押さなければならないことがあります.さらにもっとひどいこととして,文章はファイルとしてシステムにアップロードできるのに,その作業が完了したときに現れる画面を印刷して,さらに,印鑑を押して提出することさえあります.正直,「何のこっちゃ!」です.最終的には電子署名システムを導入するつもりで,今はまだその過渡期ということで署名部分だけ紙を使っているのかもしれませんが,そういう中途半端なIT化はかえって仕事の効率が悪くなり,IT化などしない方がよっぽど良い場合がほとんどです.

こんな馬鹿げた運用を行っている組織が,今の日本には数え切れないほどあります.そして,それによって仕事の効率が悪くなっていることが分かっているにもかかわらず改善しようとしない,あるいは,効率が悪いことすら口にしないでひたすらそれを続けているという環境は異常です.

どうしても個人を特定するためのサインや実印が必要であるならまだしも,どうでもいいような書類にまで検印させるようなシステムはさっさと葬ってほしいものです.これまでそうやってきたので現在も続けている,というようなことをいう人がいるなら,その人にはさっさと辞めてもらった方が組織のためになるでしょう.

愚痴のようなブログになってしまいましたが,愚痴ではなく実際にこのようなことがほとんどの組織でまかり通っている,という事実に対する驚愕と怒りをついつい述べたくなったのです.きっと,私と同じ意見を持つ人は大勢いると思います.

2010年6月18日金曜日

クラウドは敵それとも味方?

クラウドコンピューティングはネットワーク側にコンピュータの機能を配置し,必要な機能をネットワークサービスとして利用するコンピューティング形態です.とくに,IaaS(Infrastructure as a Service)はハードウェアの機能自体もサービスとしてユーザに提供しますので,ユーザは入出力装置,すなわち,キーボード,マウス,ディスプレイが備わったネットワーク機器さえあればよいことになります.コンピュータのCPU,ハードディスク容量などは年々性能が上がり,かつ,値段が安くなっています.それならば,自分でパソコンを購入しないで,簡単に契約変更でアップグレードできるクラウドコンピューティングはユーザにとって魅力的なサービスです.

しかし,このサービスが家庭における一般的なコンピューティング形態になった場合,パソコンという端末の価値はどうなってしまうでしょうか?現在,様々なメーカーが独自の機能,デザイン,搭載ソフトウェアを売り物に商品としてのパソコンを設計していますが,クラウドコンピューティングを利用する場合は,パソコンは何でもよくなります.つまり,安いパソコンしか売れなくなり,そして,デザインやパソコンメーカーのブランド力など消え去っていくことでしょう.何十年も前からこれと似たような現象は起こっています.デスクトップコンピュータが,いわゆるIBM互換機という名で一般化されたとき,CPU,マザーボードなど,一般的な規格部品で作られたパソコンであればマイクロソフトWindowsは動きました.したがって,特に有名ブランドのパソコンを買う必要が全くなくなりました.その後,ノートパソコンの時代になり,いったんは各社オリジナルパソコンを差別化して製造しましたが,結局同じような機能,デザイン,価格に落ち着いてきました.

そう考えると,クラウドコンピューティング時代ではこの傾向がさらに加速し,携帯電話にもそれが進み,端末の個体差は要求されなくなるでしょう.そのときは,iPhoneとかAndroid携帯などはネットワークの向こう側のサービスに過ぎず,小さな箱さえあれば,いかなる携帯電話も簡単に切り替えて使えることでしょう.また,新しい携帯電話を持つという満足度はもはや意味が無くなり,携帯電話メーカーは価格下げ競争に身を投げることになります.言い換えると,クラウドコンピューティングの発展は,端末メーカーの衰退につながるわけです.所有するという楽しみがどんどん減ってしまうのは寂しいものです.ハードウェアだからこそ「愛着」が湧くのです.ソフトウェアの利便性とハードウェアの愛着双方が満たされる形で,クラウドコンピューティングの時代を迎えたいです.

2010年6月17日木曜日

新聞の消滅は近い?

「最近の若者は新聞を読まない!」,という大人の発言は既に終わったようです.若者に限らず年配の人も新聞を読まなくなっていますし,購読するのをやめています.では,近年盛んに言われているように,新聞購読者数が減っているから新聞社の赤字がどんどん膨れ上がっているのでしょうか?実際には購読者数の減少よりも,広告収入の減少の方がはるかに打撃を与えています.広告を出す方からすれば,紙の新聞よりもインターネットのほうが,収入効果が高いはずです.それもそのはず,いくら新聞に広告があったとしても,そこに表示されている以上の情報はなく,また,その情報をもとにどこかに商品を買いに行かなくてはなりません.インターネット上の広告であれば,クリックするだけで詳細情報を取得することができますし,購入もできます.また,閲覧者数の確保という意味でも,人気のあるブログやホームページは最高の広告プラットフォームです.そのような状況では,新聞広告が減っていくのは当然です.

そもそも新聞のよいところは何でしょうか?広げると大きすぎて邪魔ですが,唯一よいと思われることは,記事の場所および記事の占める面積によって重要度がすぐにわかることでしょう.しかし,インターネット上のニュースの場合でも,主要ニュースやランキングなどで重要度はすぐにわかります.また,様々な種類の新聞を紙で見比べるのは大変ですが,インターネット上のニュースであれば簡単に切り替えて比べることができます.これらに加えて,インターネット上のニュースは検索が容易ですし,現在のところ無料です.これでは新聞を読む人が減るのは当然ですね.

以上,インターネット上のニュースのよいところばかり見て来ましたが,どう考えても紙媒体の新聞というものは存続する理由が見つかりません.インターネット上のニュース,メールマガジン,Twitterと比べると,新聞はもはや迅速にニュースを伝えるメディアではなくなっています.同じニュースを伝えるためには大きな紙に印刷される必要は全く無くなってしまいました.ある意味時代の流れなのでしょうが,新聞の消滅は近そうです.

2010年6月16日水曜日

日本の大学授業料は安い!?

まさしく,びっくりマークとはてなマークを付けたくなるような話です.現在,日本の国立大学の年間授業料は約55万円で,入学金は約30万円です.4年間では約250万円になりますので,平均的には年間約60万ちょっとです.一方,私立大学では,文科系学部が約95万円,理工系学部が130万円です.

これらの学費を見ると決して安くはないと思いますが,現在アメリカでは大学の授業料がどんどん上がり続けており,もっと大変なことになっています.州立大学の場合は,納税者かどうかで授業料が異なります.例えば,カリフォルニア州立大学バークレー校では,州外の学生は州内の学生に比べて授業料を3倍以上払わなければなりせん.具体的にどれくらいかというと,全米州立大学の平均授業料は,学生が州民の場合は約90万円で,最も高いところでは約140万円です.非州民の場合は最も高いところで約250万円です.州立大学の年間授業料は,日本の国立大学と比較すると1.5倍から4.2倍と大変高いです.

さて,アメリカの私立大学ではどうでしょうか?恐ろしくて手が震えるほどです.ランダムに選ばれた約50の大学の平均授業料は約360万円,最も高いところで400万円を超えます.1年間の授業料ですよ!?

特に州立大学の学費はまだまだ上昇を続けているそうで,卒業後は在学中に借りた学資ローンの返済ができなく,多くの人が困っているそうです.これほどまでに高いアメリカの大学授業料を見てしまうと,日本の大学授業料は安く見えて仕方ありません.もちろん,決して安くはないのですが・・・.日本は10~15年前のアメリカと同じような道を歩んでいると言われることがありますが,確かにその傾向が見られないとも限りません.物の価格はどんどん安くなっているにもかかわらず,大学の授業料は右肩上がりにずっと上がり続けています.この事実を真剣に受け止め,どこかの時点で対策を講じないと,本当にアメリカと同じ道を進んで行きそうです.

2010年6月15日火曜日

”はやぶさ”が帰ってきた!

「おかえり!」,と思わず言ってしまいました.2003年に打ち上げられた小惑星探査衛星”はやぶさ”が7年の出張を終えて帰ってきました.本当に素晴らしい仕事をしてきました.”はやぶさ”は目的地に行ってそこの土や砂などの試料を地球に持ち帰る,いわゆるサンプルリターン方式の探査衛星です.実際に小惑星イトカワから砂が入っていると期待されるカプセルを持ち帰りました.とにかく距離にして60億キロメートルもの旅をしてきたというのは凄いことです.イトカワの試料についての詳細はその後の解析を待たなけれななりませんが,回収されたカプセルを見た専門化は破損がなさそうと言っていましたので期待できます.

“はやぶさ”から分離されたカプセルは,2010年6月14日16時8分(日本時間)に,オーストラリア南部の砂漠で回収されました.驚くべきことに,カプセルの落下地点は予想された場所から1キロメートル程度しか離れていなかったということです.これだけ大きな地球に対してほんの数十センチメートルのカプセルが落下する位置を,これだけ高精度に予測する技術も素晴らしいです.

今回の”はやぶさ”プロジェクトの成果として,小惑星イトカワの砂を持って帰ってきたということはもちろんのこと,カプセルが大気圏内を飛行中に燃え尽きないような耐熱材料の開発も挙げられます.本プロジェクトは,サイエンス(科学)とエンジニアリング(工学)両方の研究成果が立証されたのです.

現在,”はやぶさ2”プロジェクトがJAXAで進められています.”はやぶさ”がイトカワと呼ばれるS型小惑星を対象としていましたが,”はやぶさ2”はC型小惑星を研究の対象とします.S型小惑星は岩石質ですが,C型小惑星はS型と比べて有機物を多く含んだものと考えられており,太陽系空間の有機物について,さらには,生命体との関係など,ワクワクする研究となりそうです.

2010年6月14日月曜日

コンピュータマウスは動物?

コンピュータのグラフィカル入力デバイスとして一般的なものがマウスです.これは,形がネズミと似ているところからつけられた名前だそうですが,このコンピュータマウスは動物と考えてよいのでしょうか?

何のことを言っているのかわからないかもしれませんので,詳しく説明しましょう.マウスを英語で書くと「mouse」です.複数形は「mice」と書き,「mouses」ではありません.コンピュータマウスが1つの場合は,「a computer mouse」でよいですが,2つの場合は「two computer mice」でしょうか,それとも,「two computer mouses」でしょうか?これは,私が10年位前に疑問だったことです.当時,アメリカ人に聞いたところ,少し考えた後でコンピュータマウスに関しては,「mouses」が正しいのではないかと言っていました.「mice」はあくまでも動物のネズミの複数形であり,コンピュータマウスは固有名詞に相当するので,複数形にする場合は「s」をつければよいとのことでした.しかし,固有名詞と考えるのであれば,どうして「Mouse」と大文字で始めないのでしょう?今でもこれは疑問です.

あれから10年経った今,そろそろこの答えが出ているのではないかと思い,検索エンジンで「mice or mouses」をサーチしてみました.すると,思ったほどこれに関する情報はありませんでした.どちらでもよいという意見もあれば,「mouses」という単語は存在しないので「mice」であるという意見もありました.結局のところ決着はついていない,というより,どうでもよいのかもしれません.私は何でも規則や型にはめ込み,例外をなくさないと気が済まない性格ですので,どなたか合理的な理由とともに説得して頂けると助かります.

ソニーの携帯音楽プレーヤ「Walkman」が2つあった場合は,「two Walkmen」か,「two Walkmans」か,どちらなのでしょうかね?

2010年6月13日日曜日

音と位置の関係

スピーカの近くでは音がよく聞こえますが,徐々に離れて行くと聞こえにくくなり,ついには全く聞こえなくなります.当たり前のことですが,この事実を真剣に考えて何かに応用しようとする人はほとんどいません.どのように応用するかというと,音の聞こえ具合と音源との距離は密接な関係がありますので,位置検出に使えるのではないかと思えるからです.

音は,音波が空気を振動させ,そのエネルギーが伝播することで遠くまで到達します.しかし,空気中を伝播する間にエネルギーの一部は吸収され,最終的には振動が伝わらなくなります.どのくらいの距離まで振動が伝わるかは,音源のパワー,空気の密度,音速などによって決まりますが,空気の密度や音速は日常生活の場ではほとんど一定と考えられますので,音源の出力が与えられれば音の到達距離の推定ができます.音はマイクロフォンによって検出することが可能です.マイクロフォンは音波,すなわち,空気の振動を検出すると,その大きさを電気信号に変換して数値化することができますので,音源のパワーがわかれば振動量を測定することで音源までの距離が推定できるのです.音源が1つしかない場合は1次元的な距離しか推定できませんが,3つ以上あれば3次元空間における位置検出が原理的には可能となります.ただし,ここでいう位置検出とは音源に対する相対位置を表しますので,音源の絶対位置はあらかじめ与えられなければなりません.しかし,スピーカなどは一度設置したら頻繁に動かすものではありませんので,部屋のどこにあるかは既知の事実とすることができるでしょう.

実際にこのような測定をしてみると,壁や地面の反射,さらには他の音波との干渉などによって安定した結果が得られないかもしれませんが,音源パワーを小さくしたり,体育館のように十分大きな空間で実験を行うと,それなりに結果が出るものです.音源のパワーと距離の関係は音響工学などの教科書に詳しく出ていますので,参考にして頂ければと思います.

当たり前の現象にもかかわらず,それが応用されていないとうことはよくあります.応用方法に気づかない場合もあるかもしれませんが,ほとんどの場合何かが問題で実用化されていないことが多いです.そのような問題点を科学的・技術的に理解し,その解決策を考えるというアプローチができる人は研究者に向いているかもしれません.