2010年6月8日火曜日

アレルギーからの解放近し

種類は様々ですが,アレルギーに悩まされている人は数え切れないほどいます.目に見える皮膚の炎症や痒み,本当にたまりませんね.そのようなアレルギー体質の人には朗報です.2010年6月6日発行の専門誌,ネイチャー・イムノロジー(Nature Immunology)に筑波大学大学院の渋谷彰教授らのグループが素晴らしい研究成果を発表しました.なんと,花粉症,喘息,アトピー性皮膚炎など,すべてのアレルギーの発症を抑制するタンパク質(「アラジン1」と命名)を発見したそうです.

アレルギー疾患を持ったことがある人は,「抗ヒスタミン薬」という言葉を聞いたことがあるでしょう.アレルギーの元となる抗原が人間の体内に入ると,ヒスタミンなどの化学物質が多く放出され,それが化学反応を起こすことで炎症などの症状が出ます.ヒスタミンの化学反応を抑制するのが抗ヒスタミン薬ですが,この薬だけでは完全には化学反応を抑えられません.渋谷教授らはヒスタミン等の化学反応を抑制する薬の開発ではなく,化学物質の放出自体を抑制するという方法をとり,それを可能とするタンパク質を発見したのです.アレルギーを引き起こす化学物質の放出を抑制することができれば,その化学反応によって引き起こされるアレルギー反応を根本的に抑制できるということです.すべては元を断たなければならないという,基本に戻ったアプローチが功を奏したのです.

ここで面白いと思ったことは,このニュースの報道のされ方です.朝日新聞社のホームページサイト(asahi.com)では,「すべてのアレルギー疾患の発症を阻止できる」という表現を用いていました.「すべての」という言葉を使う以上は本当に「すべて」を意味するのでしょう.しかし,どうやってすべてのアレルギー疾患を調べたのでしょうか?本当にすべてのアレルギー疾患を調べることができるものなのでしょうか?とても気になったので,他のサイトも見てみました.読売新聞社のホームページサイト(YOMIURI ONLINE)では,「さまざまなアレルギー反応を抑え込むたんぱく質・・・」,「ほとんどのアレルギー反応を根本から抑えられる・・・」という表現を,毎日新聞社のホームページサイト(毎日jp)では,「さまざまなアレルギーに共通する薬の開発につながる・・・」という表現を,それぞれ用いていました.実際にはどうなのかと,ネイチャー・イムノロジーのサイトをチェックしてみると,この論文のアブストラクト(概要)が掲載されていました.読んでみるとこの疑問に対する答えとなる表現は書かれていませんでした.本文を見るためには課金されるようでしたので諦めました.

どれが正解かはわかりませんでしたが,この発明によって大変多くの人がアレルギーから救われると思うと,「すべてのアレルギー疾患の発症を阻止できる」,であることを祈ります.

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