「制携帯」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「制服」ならありますね.「制携帯」とは学校指定の携帯電話です.2009年1月30日に文部科学省は「学校における携帯電話の取扱い等について」,という通知を行いました.小学校及び中学校において,学校への携帯電話持ち込みを原則禁止し,高校における携帯電話の使用を制限するというものです.この携帯電話の禁止・制限では,情報モラル教育の取り組みとして,ネット上のいじめや違法・有害情報から守る,ということを重要視しているようです.
このような通知を受けてのことだと思いますが,学校指定の携帯電話,「制携帯」を義務付けて教員・生徒間や生徒同士の通話・電子メールに使ってもらうという試みが,ある私立中学・高校で始まりました.そう,教員も「制携帯」を使うそうです.学校側の意図としては,携帯電話を禁止するよりも正しい使い方を教えることが重要だとしてこの制度を実施したそうです.月額使用料はかかりますが,定額サービスを利用しているため通話料は無料だそうです.携帯サイト閲覧に関しては時間による制限やフィルタリング設定があり,また,ネット上のいじめなどの問題が発生した場合には保護者の了解のもとに学校が履歴を閲覧したりGPSで居場所を取得したりできるとのことです.
文部科学省が携帯電話の使用に関して口を出すこと自体理解できませんが,学校指定の携帯電話を導入することもどうかと思います.「制携帯」を使うことで携帯電話の正しい使い方が学べるのでしょうか?生徒にとっては「制携帯」とは別に自分の携帯電話を持っているのが普通であり,その携帯電話の使い方が正しくないと言われても受け入れられるはずがありません.
この学校の生徒会が2009年に行ったアンケートによると,「制携帯」は使いたくないという生徒が3割以上だったとのことです.一方,この制度が開始されてから保護者に対して行ったアンケートでは,9割が肯定的だったそうです.学校側は,教員と生徒のコミュニケーションが楽で密になり,生徒も家で勉強がわからない時は教員にメールすることが増えている,と話しています.生徒が家で勉強しているときにわからないことがあるからといって,教員にメールするようなことをされたら教員はたまったもんじゃありません.教員の方が精神的にダウンしてしまいそうです.
禁止・規制で物事を解決するのではなく,正しいやり方を指導するというアプローチは賛成です.しかし,何が正しいやり方であるか学校側は本当にわかっているのでしょうか?文部科学省は情報モラル教育の取り組みを謳っているようですが,まず,教員の情報モラルはどうなのでしょうか?携帯電話のメールもまともに使いこなせないような教員が,生徒に対して情報モラル教育などできるわけがありません.情報モラルだけの問題ではありません.家で勉強がわからない場合にそれを教員にメールで聞くようなことを「良し」とするなどめちゃくちゃです.わからないことがあれば,授業中に聞くという教育を,まずはじめに行うべきではないでしょうか?
「制携帯」や国民番号制など,組織による監視制度が浸透していくと,日本は危険な状態に陥りそうで怖いです.
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