2010年6月30日,総務省は「SIMロックの解除に関するガイドライン」を発表しました.
携帯電話の契約者であることを示す情報が埋め込まれたSIMカードというものが携帯電話には差し込まれています.このカードはどの通信事業者のものでも同じ形をしていますが,日本では契約していない通信事業者の携帯電話に差し込んでも利用できないようになっています.これをSIMロックといいます.しかし,特に欧州の国の多くではこのような制限が外され,どの通信事業者の携帯電話でも利用できるようになっており,このような使い方ができるようにすることをSIMロック解除とよびます.
総務省はSIMロック解除に向けた意見募集を5月から約1か月間行い,その調査結果を踏まえて今回のガイドラインが発表になりました.では,結果はどうであったかというと,「本ガイドラインの位置づけ」として,以下のように述べています.
『本ガイドラインは、事業者に対し、SIMロック解除を強制するものではないが、事業者は、SIMロック解除について、本ガイドラインに沿って、利用者の立場に立った取組に努めるものとする。』
このガイドラインの位置づけは極々当たり前のことが書かれているだけで,事業者が拒めば何ら現在の状況から変わらないことを示しています.利用者の立場に立った取組に努めると言ったところで,たとえ務めなくとも強制力はないので意味がありません.こんなガイドラインを作るようでは,日本の携帯電話のガラパゴス化は解消されず,ますますグローバル社会についていけなくなりそうです.
総務省のガイドラインがどうであれ,巷ではSIMロック解除が進んでいます.特に,今,売れまくっているiPhoneはSIMロック解除方法までインターネットサイトで公開され,ソフトバンクでしか使えないはずのiPhoneにNTTドコモのSIMカードを差して使っている人も大勢いるようです.技術的に解除されるのであれば,はじめからロックなんてしなければよいですよね.
今回のガイドラインが発表されたことで,ある携帯電話端末に限ってSIMロック解除を正式に認める通信事業者が出てくる可能性があります.そのような端末がユーザにどのように受け入れられるか,その評判が市場原理となって今後の標準化に大きく影響していくことでしょう.もし,どの通信事業者もSIMロック解除を認めなかった場合,一番被害を受けるのは私達ユーザです.なぜなら,海外に行って携帯電話を使う場合,そのまま日本で使っている携帯電話+SIMカードで国際ローミングをすると,場合によっては1日何十万という料金が発生することもあるからです.しかし,SIMロックが解除されれば渡航先の国でプリペイドSIMカードを買って使えばよく,全く無理のないコストで携帯電話の利用が可能となります.さらに,日本国内でも通信事業者に縛られることなく好きな携帯電話端末を利用できるようになります.このようなことができないだけでも十分利用者の立場に立った取組ではないことがわかるでしょう.すなわち,通信事業者がSIMロックを解除しない場合は,今回のガイドラインに沿った取り組みに努めていないことになります.しかし,強制力がないから何も変わりません.そんなことにならないよう,日本の通信事業者にはよく考えてもらいたいものです.
「SIMロックの解除に関するガイドラインの公表」に関するホームページ:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban02_02000046.html
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