2010年6月18日金曜日

クラウドは敵それとも味方?

クラウドコンピューティングはネットワーク側にコンピュータの機能を配置し,必要な機能をネットワークサービスとして利用するコンピューティング形態です.とくに,IaaS(Infrastructure as a Service)はハードウェアの機能自体もサービスとしてユーザに提供しますので,ユーザは入出力装置,すなわち,キーボード,マウス,ディスプレイが備わったネットワーク機器さえあればよいことになります.コンピュータのCPU,ハードディスク容量などは年々性能が上がり,かつ,値段が安くなっています.それならば,自分でパソコンを購入しないで,簡単に契約変更でアップグレードできるクラウドコンピューティングはユーザにとって魅力的なサービスです.

しかし,このサービスが家庭における一般的なコンピューティング形態になった場合,パソコンという端末の価値はどうなってしまうでしょうか?現在,様々なメーカーが独自の機能,デザイン,搭載ソフトウェアを売り物に商品としてのパソコンを設計していますが,クラウドコンピューティングを利用する場合は,パソコンは何でもよくなります.つまり,安いパソコンしか売れなくなり,そして,デザインやパソコンメーカーのブランド力など消え去っていくことでしょう.何十年も前からこれと似たような現象は起こっています.デスクトップコンピュータが,いわゆるIBM互換機という名で一般化されたとき,CPU,マザーボードなど,一般的な規格部品で作られたパソコンであればマイクロソフトWindowsは動きました.したがって,特に有名ブランドのパソコンを買う必要が全くなくなりました.その後,ノートパソコンの時代になり,いったんは各社オリジナルパソコンを差別化して製造しましたが,結局同じような機能,デザイン,価格に落ち着いてきました.

そう考えると,クラウドコンピューティング時代ではこの傾向がさらに加速し,携帯電話にもそれが進み,端末の個体差は要求されなくなるでしょう.そのときは,iPhoneとかAndroid携帯などはネットワークの向こう側のサービスに過ぎず,小さな箱さえあれば,いかなる携帯電話も簡単に切り替えて使えることでしょう.また,新しい携帯電話を持つという満足度はもはや意味が無くなり,携帯電話メーカーは価格下げ競争に身を投げることになります.言い換えると,クラウドコンピューティングの発展は,端末メーカーの衰退につながるわけです.所有するという楽しみがどんどん減ってしまうのは寂しいものです.ハードウェアだからこそ「愛着」が湧くのです.ソフトウェアの利便性とハードウェアの愛着双方が満たされる形で,クラウドコンピューティングの時代を迎えたいです.

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